秩父市の行政評価に対する取組(平成22年度)

活用を前提とした行政評価システムの制度設計


「事務事業評価」と「基本事業評価」の2層評価を導入

 平成22年度(平成21年度の事後評価)から「事務事業評価」と「基本事業評価」の2層評価を導入しました。基本事業とは、政策の体系ピラミッド【右図】において事務事業の一つ上の階層の事業を指しています。
 平成21年度(平成20年度の事後評価)までは、右図の基本事業を「事務事業」と称し、右図の事務事業を「細事業」と称し、事務事業評価を行っていました。その事務事業と予算事業を原則一致させていましたが、事務事業評価を行ううえでは事業の括りが大きすぎるため事務事業の評価結果を予算要求へ反映することが技術的に難しくなりました。したがって平成21年度まで「細事業」と称していた事業を「事務事業」に名称を改め、一番下の階層として事務事業評価を行い、今回、新たに「基本事業評価」を導入しました。
 事業に直接携わっている職員が事業の「妥当性・有効性・効率性」の視点に立って行う事務事業評価に対して、基本事業評価は、構成している事務事業全体を見渡して、基本事業の目標を達成するには、どの事務事業を重点的に行うべきかという事務事業の方向性を決定することに主眼を置いています。

 現在、秩父市の行政評価シートは以下のシートで構成されています。
事務事業整理(評価)シート 基本事業1事業につき、1枚作成します。基本事業を構成する事務事業は14事業以内であると想定しています。記入する時期によって色分けされています。事務事業が実施計画事業に該当しない事業は、このシートで簡易評価を行います。実施計画事業に該当する場合は、実施計画事業評価書で評価及び改善計画を記入します。
実施計画書 及び
実施計画事業評価書
実施計画書は新年度予算要求前の実施計画ヒアリングで利用します。年度終了後は、実施計画事業評価書となり、評価及び改善計画を検討し記入します。
事務事業が実施計画事業に該当するか否かは、「実施計画事業フロー」で判断します。 ⇒ 実施計画事業判定フロー

基本事業の概要シート 予算要求時~年度開始前までに作成します。基本事業の概要と基本事業指標と目標値を設定します。他の情報は、事務事業整理(評価)シートから自動転記されます。
事中評価シート
(新年度予算要求資料)
直近の課題と改善策を次年度の予算要求へ反映させるため事中評価を実施しています。評価時期は、年度途中の9月~11月です。翌年度予算要求前に行う実施計画ヒアリングでは、「実施計画書」の他に、この事中評価シートも活用します。裏面は予算要求書の附属資料という位置づけで、財政課の予算査定の際に活用します。
基本事業評価シート
(主要な施策の成果報告書)
事務事業担当者が記入した「事務事業整理(評価)シート」と「実施計画事業評価書」を受けて基本事業という一つ上の階層の評価を課長が中心となって記入します。事務事業ごとの今後のコスト・成果の方向性と重点化は課長が決定します。基本事業を構成する事務事業にメリハリを付けて基本事業の目標をいかにして達成するかを課内で議論を重ねて決定していくものです。また、裏面の改善提案も課長が記入する部分です。
この事務事業評価シートを「主要な施策の成果報告書」として議会へ提出します。
改善提案に記入された内容は、翌々年度予算の実施計画ヒアリングでも活用します。

財務会計システムにおける予算要求単位を評価における事務事業単位に組み替え

 秩父市では、平成20年度に「事務事業の棚卸し」を行い、事業の目的を達成するための手段を整理し、評価対象事業の洗い出しを行いました。さらに平成21年度の予算から財務会計システムにおける予算事業を評価対象事業に原則一致させる作業を行いました。基本事業=予算事業とすることで、評価と予算が連動し、決算認定審査の附属書類である主要な施策の成果報告書が、よりわかりやすいものになりました。

 しかし、評価結果を予算編成へより反映させるためには、財務会計システムにおける事業単位も比較的に取捨選択のできる事務事業単位とする必要があります。そこで、平成23年度の予算要求前に、財務会計システムにおける予算要求単位を評価における事務事業単位へと組み替えを行いました。
 今回の組み替え作業により、23年度予算要求前に行った実施計画ヒアリングでは、21年度の事後評価結果と22年度の事中評価シートの記述内容も参考にしながら採択・不採択の方針を決定できる仕組みとなりました。
 なお、予算要求単位は評価における事務事業単位で行い、予算書には、評価における基本事業単位で表記します。

評価精度を向上させるための取組

事務事業評価 記入者研修

 平成22年度(平成21年度の事後評価)から「事務事業評価」と「基本事業評価」の2層評価を導入しました。事務事業評価は、その事業に直接携わっている担当者が記入することから、事務事業評価における、「妥当性」「効率性」「有効性」の評価視点の捉え方、指標の設定の仕方、指標の分析から改善案の検討への一連の流れなどについて行政評価スキルの向上を図るための研修を行いました。
 

基本事業評価 記入者研修

 基本事業とは、政策の体系ピラミッドにおいて事務事業の一つ上の階層の事業を指しています。事業の最小単位である事務事業評価をその事業に直接携わる職員が評価するのに対して、基本事業評価は、事務事業を所掌している課長級職員が、一つ上の階層である基本事業という視点から全体を見て、基本事業を構成している事務事業の「成果」「コスト」それぞれにメリハリを付け、事業の方向性を決定する評価とそれに対する改善案を記述することになっています。基本事業評価シートでは、課長級職員が記入する欄、主幹級職員が記入する欄を明確に区分しています。
 この研修では、今回新たに導入した「基本事業評価」について、「他団体と比較可能な基本事業指標の設定の仕方」、「指標の目標値を達成するための事務事業のメリハリの付け方」、「基本事業の現状分析と改善提案の手法」などの行政評価スキルの向上を図ることを目的にしています。
 


行政評価ヘルプデスク

 平成21年度分の「主要な施策の成果報告書」を8月31日に開会する議会定例会へ提出するため、5月初旬から事務事業の事後評価を実施しました。事業に直接携わる担当者の事務事業評価を受けて、主に主幹級以上の職員が作成する基本事業評価が5月下旬頃から始まりました。(主要な施策の成果報告書として議会へ提出するのは、基本事業評価シートです。)
 行政評価の考え方、スキルを向上させる研修を4月に行いましたが、実際に記入してみて生じた疑問点、解釈などの個別事案に対応するため、行政評価ヘルプデスクを開設しました。
 各所属の個別事案に対し具体的にアドバイスすることで、行政評価精度の向上につながります。
  • 実施日:平成22年6月25日
  • 講義時間:1課につき、30分~1時間程度
  • 対象者:基本事業評価シート、事務事業評価(整理)シートの作成で疑問点が生じている所属
    (政策行革課職員も評価スキル向上を図るため同席)
  • アドバイザー:関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科 稲沢 克祐 教授 (秩父市行政経営アドバイザー)

秩父市議員クラブ連絡会研修

 秩父市では、平成18年度分の評価シートから「主要な施策の成果報告書」として議会へ提出し、議案質疑の中でも記述内容が取り上げられ、議会においても活用されています。
 今回の研修は、その成果報告書として提出している基本事業評価シートの各項目は、どういった考え方に基づいて記述されているのか、また、成果志向の行政経営の理論について講義していただきました。

次長・課長級研修

 平成22年度(平成21年度の事後評価)から「事務事業評価」と「基本事業評価」の2層評価を導入し、今年度初めて基本事業評価シートを作成した次長級、課長級職員に対し、4月に実施した「基本事業評価 記入者研修」から更に掘り下げて、経営的な視点から行政評価を活用する手法を学ぶ研修を行いました。
 研修では、各課が作成した評価シートを持ち寄り、ポイントを押さえた評価となっているか、二人一組で議論する演習も行いました。
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市長・副市長・教育長・部長級研修

 秩父市の経営のトップ層である市長から部長級までの職員に対して、今後の全国の地方公共団体が置かれる状況と経営のトップ層に求められる行政経営手法について、秩父市行政経営アドバイザーの稲沢克祐先生に講義していただきました。その後、秩父市が進めてきた行政評価の予算編成への活用、実施計画ヒアリングによるトップダウンによる政策決定について、また、これから取り組むべき、総合計画と財政計画、行革計画とを連動させた行政経営システム等について研修を行いました。

ピアレビュー研修

 4月に実施した「事務事業評価 記入者研修」と「基本事業評価 記入者研修」から更に掘り下げて、「妥当性・有効性・効率性」という事務事業評価の視点や基本事業評価における「基本事業を構成している事務事業のコストと成果の今後の方向性(拡大・維持・縮小・廃止)」の意義や重点化する事業との関連など講義していただき、行政評価シートの記入精度を向上させる研修を行いました。
 また、その後、5~6人でグループとなり、お互いが持ち寄った事務事業評価シートと基本事業評価シートを確認し合い、レジュメに基づきポイントを押さた評価になっているかの議論が交わされ、その中で生じた疑問点について稲沢先生からアドバイスをいただきました。

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